宗道に宿陣を構えた私たちは下妻藩や下館藩に兵や食糧の提供を受けながら、
島田さんが率いる部隊が結城藩を破るの待っていた。

絹川にて島田さんたち結城藩を破ったと言う一報が、
伝わると、満福寺へと宿陣を移して、会津藩へと宇都宮城攻略に向けての援軍要請を走らせた。



私たちがこれから落とそうとしている城。


それが宇都宮城。


宇都宮城は平坦な土地に築かれた天然の平城。

北には二荒山【ふたあらやま】神社をいだく高台があり、
東に田川という川があって攻城の経路が限られるため、
攻めるに難く守るに易い。

そんな恩恵にあずかった、難攻不落の城。



その城を手に入れることで、今後の行く末が変わっていく。




その戦を明日に控えた私たちは、それぞれの時間を過ごしていた。



「土方さん、お疲れ様です。
 お飲み物をお持ちしました」


そう言って、地図を広げながらいろいろと思案している土方さんの元へと近づく。



地図の上には、策を練っているらしく、駒が並んでいる。



「あぁ、すまない。
 山波、そこに置いてくれ」


指示された場所に飲み物を置くと、私は静かにその隣に正座した。



「今、島田たちの調べで、明日の宇都宮城の内部も、すでに戦支度が終わっているのだと報告があった。
 我ら先鋒は、この梁瀬橋を渡り宇都宮城に攻め込もうと思っている」


そう言って土方さんは、私にもわかりやすいように地図を見せながら、駒を動かしてくれた。


「思い描くようにことが運べば……宇都宮城は落せるはずなんだ。
 だが……俺としたことが、今は言い切ることが出来ねぇ。

 もっと俺が……隊士たちを信頼しねぇといけないのだろうがな……」


そう言って、口ごもった土方さんは、思い浮かんだソレを取り払うように首を横に振って、
また地図へと視線を向けた。



そう今までも、こうやって戦のシュミレーションを何度も何度も一人で重ねていた時間はあったかも知れない。

だけどそこには、近藤さんが居て、新選組の仲間たちが居て……、
目には見えないけど……心が通じ合える絆が確かに感じられた。



だけど今、その新選組は内部崩壊したにも等しい。

離れていくものを追うことはないとしても、
何処かで同じ道を歩いていると思い込みたい別れだとしても、
全く同じでは心のすれ違い。


その隙間は、どんなに強靭な心を持っていても、僅かな弱みを見せてしまうのかもしれない。




「土方さん、私は兵法には明るくないので、どういう風に動けばいいかなんてわかりません。
 
 でも山南さんや近藤さんたちと一緒に過ごした土方さんなら、
 彼らならどんな風に策を講じたのかを気づくことが出来るんじゃないですか?」


「……山南さんや、かっちゃんが……思いつきそうな策……」



そう言って土方さんは再び、地図を見つめ始めた。