「ほらっ、先生に、めちゃくちゃ苦ーい良薬貰ってきてあげるから、
それまでちゃんと寝てなさい。
じゃないと何時までたっても、風邪が治んないよ。
風邪が治らなかったら、次の戦、置いてくんだからね」
そう言って、アイツの部屋を出ようとした私の元へ、
アイツは追いかけてきて、私に肩に手をかける。
「待てって、次の戦ってなんだよ。
もう白河の戦いが始まるっていうのか?
会津に来てそんなに過ぎるのか?」
敬里も現代の人間で、歴史と言う知識で会津戊辰戦争を知っている。
「白河の前の戦いだよ」
「白河の前の戊辰って言ったら宇都宮か?」
「うん」
「けど……ここの奴らは、行かないんじゃないのか?」
そういった敬里に、私は首を横に振る。
「決まったよ。出陣。
斎藤さん、慶喜公の弟である松平喜徳さま。
会津藩主に会津新選組として部隊を与えられることになったの。
負傷している兵士たちは、引き続き天寧寺で逗留して治療だけど、
動けるものは、会津藩が手配してくれた藩兵たちを新たな隊士に迎えて、
出陣が決まったの。
宇都宮の動きも、今の会津にとっては大切だもの。
それに噂では、宇都宮周辺で、土方さんの姿を見かけたって人もいるみたいでさ」
「お前も行くのか?」
「うん。
行くよ……。後悔したくないから。
だけどさ、もう刀の時代じゃないじゃん?
だから私も西洋銃、教えてもらわなきゃいけないかなーって思ったの。
銃の引き金を引けばいいって、理屈ではわかってても、どれほどに強い衝撃が伝わってくるかなんて
わかんないもの。
だけど……戦に行くんだったら、いざとなったら、相手の命を奪うことも視野に入れておかないといけない。
とっさの判断で、引き金が引ける強さと引き金を引くまでの知識が必要だと思うの。
引き金を引くまでの情報を知ってるか知らないかで、その先の未来は変わってくる。
だから……」
「ホント、お前は昔から強いよ。
強すぎて……見てられねぇんだよ」
そう言って敬里は言葉を吐き出すと、私は両手で体を抱き留められてしまう。
「えっ?何?敬里」
「あっ、悪いっ……。
薬はいらねぇよ。
俺も行くところがあるから、お前も早く斎藤のところへ行けよ」
そう言って敬里は逃げ出すように部屋から立ち去って行った。
その翌日から出陣の日まで、
私は生まれて初めて会津藩兵たちと共に、銃の訓練を始めた。
私の隣には、ちゃっかりと敬里の姿もいる。



