会津での生活がはじまった私たち。

負傷している隊士たちは会津藩の計らいもあり、
治療に専念し動けるようになった隊士たちは、来るべき戦に備えて準備を始めていた。


敬里の体調は、相変わらずすっきりしない。


時折、咳き込んでいる様子をたびたび見かけるものの、
私が近づくと、笑顔で「どうした?」なんて切り返す。


「ねぇ、敬里。
 アンタ、そんな咳き込んで血とか吐いてないでしょうね」


まさか……とは思いながら、沖田総司としてこの世界にタイムワープしてしまった敬里だから、
そんなことも危惧してしまう。


「血?
 んなもん、吐いてねぇょ。
 沖田総司じゃあるまいし。

 舞は心配しすぎなんだよ。
 ただ風邪がすっきりしねぇだけだよ。

 この薬の世界は不味いし、あっちみたいに快適に過ごせないからなー。
 っと、お前ら、良くこんな世界で数年間も生きてきたよな。

 あぁ、せめてこの喉のイガイガが少し落ち着きゃー、気分も楽になるんだろうけどな」


なんて敬里は言いながら、部屋から外へ視線を向けた。


敬里が視線を向けた先には、西洋銃の取り扱い方を訓練している風景が視界にうつる。

なんでも女性でありながら、銃に明るい人もいるらしく、
この地に居る女の人たちは、凄く輝いて視界にうつる。


「ねぇ、私も西洋銃、学習してみようかな?」

「はっ?
 んなもん、舞がやんなくてもいいだろうよ。

 やるなら……俺だろ。それは?」


そう言いながら、敬里は自分の掌をじっと見つめ続ける。




「ずっと、こんな世界、偽りだったらいいって思ってた。
 だけど……、夢じゃなくて、こっちが今の現実なんだな。

 斬った、撃ったが日常茶飯事。
 毎日、誰かの血が流れて、毎日、誰かが負傷して……。

 俺が今生きてるのも、この体の中に赤い血が流れつづけてるのも、
 奇跡に近い出来事なんだなって思ったら……、向こうで俺がどれだけ流されて生きていたかを
 思い知らされた。

 って、なんかドン暗くなっちまった。
 まぁ、舞のことは俺がサポートしてやるって言ってんだ。

 お前は、お前がやりたいように斎藤さんと走り続けろって」


「んっ、もうっ。
 アンタ、いっつもそればかりなんだから」


憎まれ口っぽく言わないと、敬里の優しさに泣いてしまいそうだから、
私はあえて突っぱねるように声を紡ぐ。