「土方さん……。
勝さんは、出来るだけのことをって言ってくださったみたいですが、
私には矛盾が残るんです。
近藤さんは……大久保大和として捕らわれたんですよね。
だったら、大久保大和としての助命嘆願のみが必要なわけで、
大久保大和に関わりのない、
近藤勇としての印象が近くなるものからの助命も嘆願も必要ないのじゃないでしょうか?
確かに私が知る未来の歴史の中では、近藤さんは近藤勇として斬首されました。
だけど……あの時は、確か新選組の誰かが嘆願書を持って行ってるんです。
そしてその隊士も殺されてるはず……。
だから、その助命嘆願が届かなかったとしても、その方が未来が変わるかもしれないでしょう?」
そう、未来が変わるかもしれない。
こんな悲しいことばかりの歴史は辛いから、
何処かで未来が変えられるなら、それもいいでしょ?
心が救われる細やかな未来なら……。
ずっと未来を変えちゃいけないって言い聞かせて思い続けてきた私自身が、
今は、こうして未来を変えたいと望むようになってる。
だけどそれも、この時間が、この世界で関わってきた人たちが、
私の守りたい助けたい人になってる。
だから……今は、この大切な人たちを見守り続けたい。
「山波……そうだな。
かっちゃんの事を助命嘆願して、命を助けたいと思った。
だが俺が下手に動いても、かっちゃんが近藤勇だとばれちまうんだな。
感情ってやつは、どうにも一筋縄ではいかねぇもんだな。
島田らと合流して、今後を話し合おう」
土方さんはそう言うと、再びを私を連れて、待ち合わせ場所の宿へと移動した。
宿にはすでに何かを調べ終えた島田さんたちが姿を見せていた。
来る4月11日に、旧幕府軍は江戸城を新政府軍に無血開城することを知ることとなる。
「江戸城明け渡しか……。
なら、この場所に留まるのも良くねぇな」
「島田、周辺で旧幕府軍が集まってそうな場所の情報は?」
「市川宿鴻之台にて旧幕府軍が集結しています」
「鴻之台かぁ。一気に移動するぞ」
そうして私たちは新たな戦の場を目指して移動を開始する。
私たちが鴻之台で新たな味方たちと合流したその日は、
悔しくも江戸城の無血開城の当日であった。
鴻之台に辿り着いた時、そこには2000人余りの旧幕府軍が集結していた。
会津や桑名藩士や、旧幕臣たちも姿を見せていたようだった。
私は面識がなくでも、土方さんは知っているみたいで、
見知った存在のことは、「あの人が大鳥圭介。幕臣だ」っとか手身近に教えてくれた。
かといって簡単に覚えられるわけじゃないけど、
同じ思いを持った人たちが多くいると思うと、それだけで少し頼もしく感じた。
合流した翌日には大林院と言う場所に移動して、そこで土方さんは評議に参加することになる。
再び待ちぼうけになった私は、その場所で懐かしい人の姿を見つける。
「永倉さん……」
ずっと一緒に歩き続けてきた永倉さん。
そしてその傍らに居るはずの、原田さんの姿がないのに気が付く。
「山波君、君も此処にいたのか……」
「はい。土方さんや、島田さんと共に今は行動しています。
斎藤さんは舞と一緒に、あの後会津へ先行したので今頃は到着してないかなぁー」
「そうか……。皆、無事か……」
「近藤さんが流山で捕まりました。
その後、どうなったかは知りません」
そう告げると、永倉さんも黙って口を紡いだ。



