原田さんと永倉さんと別行動が決まり、
それと同時に斎藤さんへも重大任務が与えられた。

先の戦いで負傷し江戸で僅かに傷を癒し、
また新たな戦地へ赴こうとしている負傷兵たちを、
先行部隊として無事に会津へと送り連れていく事。


それが近藤さんから託された、斎藤さんの役割だった。


先の戦いから風邪をひいて今も本調子でない敬里。
そんな敬里の部屋へと向かう。


「敬里、入るよ」

部屋に入ると煎じられた薬湯を飲みながら、
顔をしかめるアイツ。


「私、先に会津に向かう。
 斎藤さんと一緒に。

 アンタはどうするの?
 花桜と一緒に、もう少しこっちに残るの?」


そう言って問うとアイツは「俺は行くよ」っと小さく紡ぐ。




行くよ。



ただそれだけの言葉なのに、正直は私は驚きを隠せない。
アイツは、花桜と同じ時間を選ぶと思ってたから。


「ホントに?
 花桜を助けなくていいの?」

「えっ?花桜を助けるって誰が?
 アイツはうちの家宝も祖父ちゃんから託されてる免許皆伝に等しい存在だよ。

 それに……アイツは大丈夫だよ。
 こっちに来て、山崎って人が亡くなった時は心配したよ。

 けど今のアイツはそんな不安がない。
 まっすぐに、何かを見つめ続けてる気がするんだ。

 俺が視えない何かがアイツには視えてるんだろうな。
 だから俺は行きたいように行動する。

 幸い、今の俺は敬里だろ。
 他の奴にとってもさ。

 何時、出発するんだ。
 俺を置いてくとか無しだからなー」


そう言って、敬里は手にしていた薬湯を最後まで飲み干した。


「あぁ、不味かった。
 この渋みと苦み何とかなんねぇかなー。

 あっちの世界の飲み薬がどれだけ飲みやすいか有難味を感じるよ」


そう言って、湯呑を置いて口元を手で拭った。