違う。


違うの…



「俺は、桜が…」


「っやめて!!!」




私に伸ばしかけた手が止まった。


拓夢の顔が、切なく歪んだのが目に映る。




ごめん。拓夢、ごめんなさい。




「拓夢くんは、知らないだけなんだよ…

私は、自分自身なんて全く出せてない。出してない。


嘘ばかりつく汚い最低な女なの!


…ごめんなさい。あなたの気持ちには答えられない」




冷たく言い放ったつもり。

私のことなんか、どうでも良くなるように。


哀しい願いを込めて―――




人気のない廊下にはただ、私の走り去る足音だけが響いていた。