ゆっくりと歩く私たち2人の、カランコロンとした下駄の可愛らしい音が心地よく胸に響く。 行きとは違う、静かな時間。 もうそろそろお別れ、と思ったらなにか話さなきゃと思わず口が開く。 「今日は、ありがとう、大野くん。楽しかったよ!」 「へぇ。」 「お、大野くんの浴衣、かっこよすぎて直視できない…。」 「ふーん。」 それ以上会話が続くことはなく、またカランコロンと音が響く。 でもいきなり、その音が止まって、 ぐいっ。 大野くんが繋いでいた手を引っ張り、私との距離が30センチほどになった。