言われたこと、頼まれたことは何でもするし、文句のひとつも言わない。
授業中は寝てばかりのはずなのにあたしより成績もいいし、クラスでも学年でもトップクラスに入るくらいだから先生も別の意味で褒めていた。
その人間力や根性、信頼性でいちばん頼れるとして、先輩からは部長にも指名されて、これからが頑張り時だというのに。
泰知の死は、恐ろしく残酷だった。
県駅伝は一区を任された山仲高校の大エース。
誰もがその実力を認めていた。
それくらい泰知は強くてオーラがあって、魅力があって、カッコよかった。
「本当に勿体ないことしたよね、泰知。」
「ああ、物凄くな。」
昇馬はわざと、ブランコを揺らす。
その音が、あたし達の会話の間に出来る少しの間を埋めてくれた。


