いちについて、




“大丈夫か?ずっと電話してたけど出ないから、心配したんだぞ?”


「ごめん、昇馬………。昇馬は、大丈夫?」


“まだ信じらんねぇ。気を抜くとまた泣けてきそうで、今、必死に耐えてんだよ。”


「そっか。」



昇馬の声からは疲れや悲しみ、苦しみが滲み出ていた。

人を失うということが、それも大切な人がいなくなるということが、どれほど辛くて苦しいものかというものを再び思い知らされる。



“今日、何してた?”



「気づいたら、寝てた。さっきまで…。」



“寝れたなら、良かったな……。なあ、夕夏。”



「ん?」



“今から、会えない?”




昇馬のその言葉、あたしには拒む理由が無かった。



「あたしも、会いたい……。」



“すぐ行く。”



昇馬は本当にすぐに来た。


あたしがずっと着たまんまだった制服を脱ぎ、私服に着替えて部屋を出る頃には昇馬はもう家の前にいた。


きっと、あたしに電話した時にはもうそこに居たのかもしれない、と思わせるくらいに。


「ちゃんと、立てるようになってて良かったよ。」


昇馬は優しい笑顔であたしの頭をぽんぽんと撫でる。


その目は腫れていて、きっとずっと泣いていたということが、よくわかる。