わぁっ!!と楓が泣き出す。
楓さん、と周りの後輩が戸惑う声も聞こえるし、いくつかの鼻をすする音も聞こえる。
あたしは耐えきれなくなって、電話を切った。
先ほどまで耳にあった楓の声が聞こえなくなり、部屋の中がこんなにも静かだったかと驚く。
コンコン……。
ドアが抑え気味にノックされた。
「夕夏、ご飯食べる?」
「………いらない。」
呟くようにそう言い、顔を膝の中に埋める。
「………お母さん、もう少ししたら仕事に行くから。学校には行かなくてもいいけど……一回くらいはちゃんとご飯食べてよ。」
それから、すぐ近くにあった足音は遠ざかっていく。
お母さんが理解がある人であって本当に良かったと思う。
使い慣れたベッドの上、あたしは膝をグッと自分の腕で抱きしめ、その中に顔をうずめたまま、気がつけば夢の中へと迷い込んでいた。


