途中で、泰知のお母さんが連絡したみたいで、あたしと昇馬の家族も来たけれど、あたし達は霊安室には入れなかった。
集中治療室から出てきた泰知の顔には白い布が被せられていて、その顔は見えなかった。
見たくもなかった。
泰知がいないなんて、ありえない事実すぎて、辛かった。
もう、涙なんて止まらなくていい、そう思ってしまうくらいにあたし達は泰知への感情を涙としてぶつけた。
こんなに涙を流しても、もう戻ってこないってことは分かっている。
分かっているけれど、あまりにも唐突すぎて苦しくて、辛くて………。
でも、ひとりじゃなくて良かった。
昇馬の冷えた手を握っているだけでも、あたしは少しの余裕を感じることができた。
もしも、昇馬もいなかったら。
それは恐ろしくて想像出来ない。
昇馬までいなくなったら、あたしは完全に壊れてしまう。
それは、確実なことだと、感じた。
ひとりで立ち上がることはやっぱり出来なくて、昇馬やお母さんに支えられながら、あたしが家に向かう頃にはすでに外は明るくなり始めていた。
それでも涙は止まらない。
『泰知がいない。』
その言葉が頭を過ぎる度に涙は再び溢れてくる。
泰知や昇馬があたしの心を占めている割合がこんなに大きかったなんて、考えたこともなかった。


