それから、スマホをあたしの手に握らせ、自分は両手を組む。
先ほど、泰知が運ばれた霊安室の閉められた扉を見ながら、昇馬はゆっくりと口を開き、大きく息を吸った。
「事故だったんだ。」
「……。」
「電車に撥ねられた。ほら、今、遮断機が壊れて動かないところの。」
それで、すぐにわかった。
どこのことを言っているのか。
1週間ほど前に急に動かなくなった電車の遮断機。
危険だから通るな、と先生に何度か勧告されたところが、今回の事故現場だった。
「あいつ、変に抜けてるとこあるじゃん。しかも、イヤホンしてたから直前まで気づけなかったんじゃねえかって、思って……だけど……。」
そこまで言ってから、昇馬はまた鼻をずずっと啜る。
昇馬の涙もまだ止まっていないようだ。
「なんで、泰知の携帯で電話してきたの。」
あたしは、気になっていたひとつの疑問を昇馬に投げつける。
まだ、涙が止まらず、両手で顔を覆ったままだから、声はだいぶくぐもっている。


