「どうして、泰知が………。」
声が震える。
自然と呼吸が速まり、苦しくなる。
目の前の光景が理解出来てくるのと同時に、今度は深い悲しみのような負の感情が湧き上がってくる。
膝が笑い、うまく立っていられなくり、力が抜けてしまったようにストンとその場に座り込む。
「泰知、嘘……でしょ。………なんで、泰知……。」
「夕夏……。」
昇馬がしゃがみ込んだあたしを見かね、自分もしゃがんであたしの肩を抱く。
「泰知……うぅっ…、た、いち……。」
もう、堪えきれなかった。
涙が、どんどん、溢れてくる。
自然と、後から後からとめどなく涙が溢れ、頬を伝う。
「あぁあああああー!!!泰知ぃ、うう……たいちぃ!!!」
静かな夜の病院の廊下に、あたしの叫び声と、昇馬が時折鼻をすする音しか聞こえない。
ここからでは、心電図に繋がれた泰知の心臓の音も聞こえない。
今、泰知が生きているのか、死んでいるのかも分からない。
泰知の体が、ここにあることしか分からない。


