「昇馬………。」
昇馬の顔は、苦痛に歪んでいたことに気づいた。
溢れ出す何かを必死に堪えているような、そんな顔をしていた。
「とりあえず、中、行かね?寒いだろ。」
「え……、うん。」
昇馬は病院の中へスタスタと入っていく。
昇馬の少し後ろをついて歩く。
いつもと違う昇馬の後ろ姿に、変な胸騒ぎが徐々にに確信に変わっていく。
「ICU………。」
昇馬が立ち止まった目の前の扉には、そう青色の字で書かれていた。
「もう、助からねえって。」
昇馬は中の様子をドア越しに覗く。
あたしも昇馬にならってガラスのドア越しに中を見る。
中にはマスクや帽子などといった完備を抜群にした泰知のお母さんが、こちらに向かった状態で椅子に座っていた。
その周りでは、数人の看護師やら医師が忙しなく動き続ける。
「どうして……。」
引き戸のドアに手を当てても扉は開かない。
だけど、あたしは泰知に触れるように、ドアを撫でる。


