「夕夏~、そろそろだよ~?」


少し遠くから、親友である二宮楓(にのみや かえで)に呼ばれ、声のほうを見る。

振り返った瞬間にひゅうーっと乾いた風が耳元で吹き、その冷たさに顔をしかめる。


「招集始めるって、係の人言ってたよ。」


あたしの顔を見た楓の頭は困ったように眉尻が下がっていた。



「楓、どうしたの?」


「いや、今夕夏のうしろに誰かいたような気がしたから......。」



それを聞いて、今度はあたしが眉尻を下げた。



「誰って、泰知が......。」


そう言ってあたしが今まで見ていた方向を振り返る。



「あれ......。」




今までそこにいたはずの泰知の姿は跡形もなく消えていた。




「夕夏。」



名前を呼ばれ、楓のほうを見ると、楓の顔は困ったような、それでいて悔しそうな表情を見せていた。