これが、泰知と交わした最後の会話だった。
この時見た後ろ姿が、泰知の最後の姿だった。
あたしと昇馬はなんの違和感も覚えることなく家へと向かった。
もし、泰知に何か用があって、呼び止めることが出来ていたなら………。
「じゃあな、夕夏。明日遅刻すんなよ?」
「泰知じゃないんだから、バカにしないでよね?」
今日は最後まで笑われた。
この変なむず痒さは明後日のレースで見返してやればいい。
そう、考えながら昇馬を見送ってから家に入った。
家にはもちろん誰もいなかった。
お兄ちゃんは大学だし、清夏は塾。
お父さんは出張が始まって日本にすらいないし、お母さんも仕事がまだ終わる時間ではない。
パチパチとリビングとキッチンの電気を順につける。
仕事に出る時間が遅めのお母さんは、あたし達に夕食だけはしっかり作ってる。
今日はチキンライスが白いプレートの上にのっていて、その上にはラップが掛けられてあり、冷えた水滴がラップに引っ付いていた。


