「まあ、三年ぶりに出るんだろ?女子は。頑張らないとなぁ。」
「そうだよー。あたし、注目の的になっちゃってるけどさ、中距離のほうが速いからプレッシャーなんだよね。駅伝は好きだけど。」
「好きだかどっちだかわかんねえって!」
泰知があたしの頭に軽くチョップを入れる。
「いったぁ!!バカ!!」
なんか今日、馬鹿にされてる感じがありすぎてすごい嫌だ。
「そんなに怒んなって。大会前だろう?緩くいこうぜ。」
こういう時だけわざと楽しんでいる昇馬も今日は嫌だ。
「そーだよ。お前、ソワソワしすぎ。気持ちわりいぞ?」
「気持ち悪いは余計!!そんなソワソワしてたかなぁ。」
たしかに落ち着かないよ。
中学以来の駅伝だし。
最後の駅伝が辛い思いした時だったから、緊張しない訳ないじゃん。
「あ、俺ここでドロンするよ。母さんに明日の飯は自分で買ってこいって言われたからさ。じゃな!」
「お〜う、じゃあな〜泰知〜!」
唯一信号機がある交差点で、泰知は向こう側に渡る。
あたしたちはここを左に曲がって家へと向かう。
少し機嫌を悪くしてしまったあたしではあったけれど、サヨナラを言わないのはちょっと良心が痛むから……。
「じゃあね!ばか泰知!!」
「ほんっと、素直じゃねぇんだから。」
ぽん、と昇馬があたしの頭に手を置く。
「うるさいよ、昇馬。」
「じゃな〜夕夏〜!」
こちらの会話が泰知に聞こえたかは分からなかったけど、泰知は自転車に跨り、すぐに暗闇に姿を消した。


