「陸上は?やらねーつもりで言ってんの?」
「うん………。」
「そうか〜。」
お兄ちゃんも、高校生までは陸上選手だった。
でも大学に入って辞めてしまった。
別に辛いとか、そういう理由じゃないことを、知っていた。
高校までは楽しそうに走っていた。
『何かが違った。』
三年前、電話でお兄ちゃんと話した時に、そう言われた。
楽しいはずなのに、好きで走っていたつもりなのに違う感情が芽生えてしまったって。
お兄ちゃんはあたしに陸上はやめるなとその時に言った。
才能あるやつが自分の才能に磨きをかけることにこそ意味があるんだと。
お兄ちゃんはあたしに思いを全部ぶつけていた。
それを重いとか、苦しいとかっては感じなかった。
だけど、泰知がいなくなった今、多くの人からの期待が重圧で苦しくて仕方なかった。
だからもう、陸上を辞めてしまおうと考えていた。


