昇馬が言ったからかもしれない。
昇馬の言葉は、泰知の意図をいつもズバッと貫いて当てることが出来る。
そんな、昇馬が言うからかもしれない。
「ごめんなさい、あとで……読みますね。」
あたしは自分のリュックサックに封筒をしまった。
それから、後ろの遺影には振り返らずに立ち上がる。
振り返ってしまったら、今度こそ涙を堪えきれなくなってしまうと思うから。
そんなことは出来ない。
本当はまだ現実から顔を背け、泰知の方ばかりを見ていたい。
だけれども、そうには行かない理由もいくつかあって、あたし達は結局泰知のいない世界を受け入れて生きていくしか術がないのだ。
「また、来ますね。」
立ち上がるあたしを見ていた昇馬は自分も立ち上がり、そう言ってあたしの腕を引いて玄関まできた。
それから、並べていたローファーに同時に足を入れる。
お見送りに来た泰知のお母さんに振り返るのと同時に、泰知のお母さんは口を開いた。
「二人は、付き合っていたりするの?」
予想外の質問に少し戸惑ったけど、いえ、とあたしは迷いなく首を横に振った。
「そういう関係は、あたし達にはありませんよ。」
「そう…変なこと聞いて、ごめんね?ありがとう。」
「いえ、とんでもないです。」
頭を下げて、家を出る。
ガチャ…と閉まるドアは何故か悲しげだった。


