「ねえ、二人とも。」
泰知のお母さんに呼ばれ、あたし達は体ごとお母さんの方に振り返る。
「あたし、こんなものを見つけてしまったの。」
白くて血の気がなく、骨が浮き出た泰知のお母さんの手にはひとつの封筒が握られていた。
「あなたの名前宛てだったから。あたしは中を見ることはできなかったわ。あなたのだから、あなたが開けてね。」
受け取ると、それにはたしかに泰知の字体で『夕夏へ。』と封筒に書き記されていた。
「あたしに……。」
封筒にはノリが付けられていて簡単に開けることは出来なかった。
それでも封を切ろうと両手を封筒に揃える。
が、突然なにかに取り憑かれてしまったかのように両手がガタガタと震え、上手く力が入らなくなる。
どこかでかけられてしまった呪いのようにあたしの手は自らの意思を聞かない。
どうしよう、
どうしよう……。
訳の分からない焦燥に追われた時だった。
「今じゃなくても、いいんじゃないか。」
昇馬が、あたしの手の上に自らの手を重ねる。
刹那、手の震えは一瞬にして治まった。
「今、お前も辛いだろ?今じゃなくても、いいだろ。だって、泰知だぜ?」
その言葉には、言い知れぬ説得力があった。


