昇馬の左手があたしの右手に優しく触れた。 それは、あたしの手を力強く握る。 ここにいるよ、と存在意義を主張してくるその握り方はどことなく泰知に似ている気がした。 あたしは昇馬の手を握り返した。 隣を見ると、少しだけ彼の口元が緩んだ気がする。 単純で、馬鹿。 それが、たまらなく丁度いい。