「あのね。」
「あのさ。」
あたしが昇馬の方を見て口を開いた瞬間、昇馬と目が合い、声が揃った。
「夕夏、話せよ。」
「いや、大した事じゃないし、昇馬話して。」
「でも………」
「いいから。」
あたしが押し通すと、昇馬は一度大きくため息をついてからそれからまた息を吸った。
昇馬が吐いた息は白く空中に漂い、跡形もなく消えていく。
「練習、来いよ。」
多分、そうだと思った。
昇馬が悩んで悩んで口にするような言葉はそれしかないと思った。
その通りであったことに、この人とはやはり心の通いあった幼なじみなのであると実感させられる。
でも、あたしの答えは前から決まっている。
「戻らないと思う。」
「そっか。」
酷く落胆したような素振りも見せず、それで納得と言ったように昇馬は頷いた。
「で、夕夏は?」
「あ、あたしは……同じようなこと。やっぱり、戻れないかなって。」
「戻れない?」
「えっ?」
昇馬が、何について気になったのか、あたしは分からなかった。