バイバイ、と二人に手は振ったものの……。


泰知の家はもちろん、あたしの家の隣にあるわけで。


泰知が昇馬といくらか話して手を振り合い、自分の自転車のストッパーを留めたのと同時に、あたしは泰知に声をかけた。




「泰知!!明日は寝坊しないでさ、一緒に学校行こうよ!」



「夕夏か、まだ家入ってなかったのか………うーん、起きれたらな!」




「ばか泰知!絶対起きてよ!!」



いつも余裕をもって家を出るあたしと違って泰知はもちろん毎朝のように朝寝坊をする。


高校に入りたての頃は起こしに行ったりもしたけど、あたしじゃ起きなくなってきたから最近は自転車で家の前を通る昇馬に任せている。


昇馬は、家からもう少し上り坂を登った先にある。


ここよりももう少し閑静な住宅街で家は昇馬の家の他に三軒くらいしかない。

でも、昇馬の家は世間一般で言う『おばあちゃん家』って感じがして悪くは無い。



独特な日本家屋を少しだけ修理したような構造は、行くたびにいつもあたし達を迎え入れてくれる。


昇馬は嫌だとは言うけれど、あたしは将来あんな家に住むのも悪くは無いと思っている。


口を尖らせた泰知を横目に、あたしは家の中に入った。