先生に見つからないように警戒するためか、二つの自転車はいつも通る大通りとは違った路地に入っていく。
狭い道をビュンビュンと二つの自転車が駆ける。
耳元で鳴る風の音はまだ少し冷たかった。
これから夏だし、どんどん暑くなっていくんだろうな。
中学の頃と違って合宿も組まれるだろうし、大会も片っ端から出されるだろうし。
あたしの家の前に自転車が着く頃には、泰知の背中はじんわりと汗ばんでいた。
本当はもう少しこのままでいたかったけど、泰知に重いって言われるのは確実だから、ゆっくりと自転車を降りた。
大分足には感覚が戻り、ひとりで普通に立つことが出来た。
「にしてもふたりとも部活終わりなのによくそんなにスピード出せるよね?」
「だって今日、6000m1本だけだったし?なあ、昇馬。」
「まあな。期待の新人さんとは違って俺らはまだまだ凡人だからな。」
「もう!あんまりあたしの成績のこと言わないでって言ってるじゃん!」
あたしが口を尖らせると、二人揃って笑った。
「はいはい、分かったから。早く寝ろよ?じゃな。」
「うん。バイバイ、泰知、昇馬。」