しばらく待っていると、ギコギコと聞き慣れた音が二つ近づいてきた。
その音はあたしの目の前でキュッと止まる。
練習後、最後まで片付けをしていた昇馬と泰知が自転車に跨って並んであたしの目の前に立った。
「夕夏、にケツしようぜ。」
「ん、悪くないかも。」
まだ力が入らない足をどうにか動かして泰知の後ろに乗る。
「三人とも先生に見つかんなよ〜!!」
声の方を見ると、凪斗さんが部室の入口から手を振っていた。
「頑張りま〜す!!」
自転車を漕いでいる二人に変わり、あたしは凪斗さんに向かって手を振った。
「おい、学校でるまで飛ばすから捕まってろって。」
「はいはい。」
あたしが泰知のお腹に手を回すと同時に泰知と昇馬は自転車を飛ばす。
キィーキィーと自転車が軋む音も悪くなかった。
ジャージで帰ると先生に怒られる。
でもこれまでジャージで帰ってきたなかで、先生に見つかった事は無い。
同じクラスで見つかった男子がいたけど、反省文を書かされたとか。
そんなことは本当にゴメンだ。
もちろん、今日もバレずに校門を抜け出せた。