いちについて、




その後の姿はたぶん、誰もが予想できるような展開で……。


9本目には足が動かなくなり、10本目には設定タイムより18秒も遅れ、もう一本付け足されるという始末。


そんなあたしを、前川先生は常に笑顔で見つめていた。


本当に鬼畜以外の何物でもないって。



走っている最中、先生の顔が浮かぶ度に頭の中で顔面を潰した。


「マッサージしてあげよっか。」


部活終わり。

いくら6月だからって夜の7時半はもう暗がりが増している。



「ねえ、殴るよ?」


部室棟の段差に座って立ち上がれずにいると、泰知が近づいてきた。



「そんな目的じゃないって。」



「顔が歪んでる。」



マッサージはたまにしてもらったりはするけど、今日のこの人の顔、完全に悪意に歪んでるもん。

そういうときにマッサージさせたらほんとに何しでかすかわかんないし、わたしの純粋な体をいじらせたくないし。



「うるさいって。てか、お疲れ様だな。俺もそのうち越されそうだな。」


実は、昔の負けず嫌いの性格が今でも続いているおかげで、泰知に負けたくない精神が働き、泰知の800mのベストタイムとはさほど変わりはない。


「まあこれどけ走らされてベスト更新出来ませんでしたって、笑い事になんないもんね。越してやるからそのうち。」



「おい、まだあの時の怨念?」


あたしは泰知を見上げた。

泰知は両手を腰に当てて派手に笑う。



「当たり前でしょ。あの時負けたのは本当に悔しかったんだから。」


初めて泰知に負けた日。



あの日、すごく悔しかったの今でも覚えている。

相手は、男子なのに。