山仲高校の女子陸上部員は全員で四人。
藤村菜々子さんは400mが専門だけど、長距離もこなすし200mでも決勝に残れるといったマルチな才能を兼ね備えている。
それから、中長距離専門の一年女子、あたし、楓、そして今しがた部室に飛び込んできた越川茉優。
男子は短距離人口もものすごく多いくせに、女子はたったこれしかいないから駅伝のチームだって組めない。
「あ、そう言えば今日前川先生が来るんでしょ?」
茉優が黒のネクタイを緩めながらこっちを向いた。
「ねえ〜みんなして!!」
力任せに結っていたゴムを引っ張るとバチン!と音を立ててゴムは切れた。
「菜々子さん、持ってないですか?」
だらしなくびよんと伸びたゴムを見せると、あるよ、と菜々子さんは新しいものを自分のポーチから出してくれた。
「だってそりゃ、いきなり二位なんてところ行かれちゃ誰だって有名にしたくなるでしょ!」
「そうかもしれないけど……。」
たしかに、一年生で決勝まで残ったのはあたしだけだった。


