その日のうちに楓が陣地に帰ってくることは無かった。
戻ってきたのは楓の母親で、あたしの競技が終わったあとに楓の荷物をまとめに来て、すぐに帰ってしまった。
楓は全治3週間の靭帯断裂と診断された。
まだ、完璧に靭帯が切れていたわけじゃないだけいいと医者には言われたらしいけど、あの日以来、楓はまだ思い切り走れていない。
普段は元気な楓ではあるけど、放課後になるにつれて調子づいてくる泰知と違ってどんどん静かになる。
毎週金曜日にはリハビリもあって、それはしばらく通わないといけないらしくて。
インターハイの県予選にも出ることが出来なかった。
「すいません!!遅れた!!」
そう言って部室の扉が開いた音で、あたしの思考は停止し、今に戻ってきた。
「今日は何してたの?」
菜々子さんが面白そうに笑いながら聞いた。
「日直と間違えられて先生に説教されてたんですよ。後から日直の子が出てきたんで謝られたんですけど………。」
答えながら、越川茉優(こしかわ まゆ)はあたしのリュックの隣に自分の荷物を置いた。


