誰もが彼女の走りに目が釘付けになった頃。
「ヤバイかもな。」
「あぁ。」
隣で応援していた泰知と昇馬が言葉を交わし始めた。
「ねえ、どういうこと?」
あたしが二人に向かって尋ねると、二人は揃って顔をしかめる。
「歩数が合わなくなってきてる。」
「えっ………。」
その瞬間に、会場がどっとどよめきをあげたのがわかった。
思わずトラックの方を見る。
「…か、楓!!!」
楓は陣地のあるあたし達の目の前で、大胆に転んでいた。
走っていた勢いのおかげで二回転、回ってしまう。
目を瞑りたくなった。
見ていたくない、そう思った。
楓がまだ立ち上がれずにいると、隣のレーンから楓の方を見ながらも全員が彼女のことを越していく。
ようやく、彼女が立ち上がった頃には楓は最下位だった。
係員が寄ってくるのも気にせずに、彼女は走り出す。
でも、あたしは見てしまった。
楓の両足が血だらけであるのがちらりとだけ一瞬見えた。


