似合わないと言われ続けているキャップをいつもより少しだけ深めに被って駅を出る。
「久しぶり。」
駅の入口で昇馬は立っていた。
「久しぶりだね、元気にしてた?」
地元で働いている昇馬の肌はこんがりといい色に焼けていた。
どんな仕事をしているのか、既に覚えていない。
それくらい、昇馬に会うのは久しぶりだった。
「どうする?最初に泰知に会っとく?」
「そうだね、ただいまって言ってこなきゃね。」
昇馬は頷くと、先に歩き出した。
私はスーツケースをガラガラと引いて、その隣に並ぶ。
私は昇馬の横顔を盗み見た。
子供の時に海とかプールに行きすぎて、色素が抜けてしまった髪は未だに戻らないようで、淡いブラウンは太陽に照らされ金髪のような印象を受ける。
「なに、久々に会って惚れ直した?」
あたしの視線に気づいたのか、前を向いていた薄いグレーの瞳があたしの方を見る。
「もう、バカじゃないの。」
空いていた右手で昇馬の左肩を、拳を作って軽く小突くと、
「いって〜折れた〜。」
なんて、しょうもない冗談を言ってみせた。


