部室につくと、泰知はすでに着替え終えていた。
今日使う道具を引っ張ってきて、校庭のわきまで運んでから隣の部室の扉を開けた。
「もう!ノック!!!」
扉を開けた瞬間に何かが顔面めがけて飛んできた。
「ご、ごめんなさい!」
飛んできたのは部室に置いてあるメディシンボールという、重りの入ったボールだった。
スレスレで避けたから幸い怪我には至らなかったけど、もし当たっていたら顔面ぐちゃぐちゃだった。
ボンボンと弾んでいたメディシンボールはそのうち勢いを失い、動きを止める。
動きが止まったメディシンボールを拾い上げてから部室に入る。
ボールを投げた犯人はすぐにわかった。
なにせ、部室にはひとりしかいなかったし、いくら部室の扉を不注意に開けてしまったからってメディシンボールを飛ばしてくるような人は陸上部にはひとりしかいないのだから。
「菜々子さん、扉を開けたのは悪いと思いますけど、メディシンはさすがにやりすぎですよ。」
言いながらメディシンボールをもとあったと思われる位置に戻す。
「あんたも女子なんだから、この気持ちはわかるでしょ?」
「でも〜……」
「ま、泰知が来たと思って投げただけだからあんまり気にしないで?」
陸上部唯一の二年女子である藤村菜々子(ふじむら ななこ)さんは胸のあたりまで伸びた長い髪を高いところでひとつに結びあげた。
菜々子さん、楓並みの美貌を兼ね備えているにも関わらず、そのサバサバとした男勝りな性格のおかげで、彼氏いない歴はイコールだと風の噂では聞いた。
あたしは菜々子さんの荷物の隣に自分のリュックを下ろしTシャツやランパンを出した。


