「楓、今日は部活どうする?」
あたしは、焦げ茶色の革バックを肩にかけて、椅子を机の中に入れていた楓に振り返った。
「ごめん、今日リハビリ。」
「あ、金曜日だったもんね。忘れてた。次の病院は?」
「日曜。部活終わってから行くから心配しないでね。じゃあね、夕夏、昇馬。」
ちょうどあたしの隣を通った昇馬にも声をかけてから右手を上げて楓は教室を出ていった。
じゃあね、と声をかけようとした時にはもうすでに楓はあたし達に背中を向けていた。
名残惜しそうに楓の右手がゆっくりと下りる。
「あいつ、大丈夫なの?」
楓が教室を出て扉を左に曲がった彼女の横顔が消えてから昇馬があたしの真後ろでそう聞いてきた。
「大丈夫じゃ、ないかな……。」
「てか、部活遅れるからはやく。」
あたしが茫然とそこに突っ立っていたのを見かねて昇馬はそう言ったけど、あたしはしばらくそこから動けなかった。
帰ってしまった楓の姿をそこに探してしまった。
結局足を動かし始めたのは昇馬がエナメルバッグを肩に背負って二度目にあたしに声をかけた時だった。


