それまで頑張っていた英語のプリントは、授業が始まると同時に回収されて、手元には何も残らなかった。
「じゃあ、参考書の270ページ開いて。」
英語がまるっきり嫌いなあたしにとって、英語の時間は苦痛でしかない。
「ふぁぁあ………。」
一番後ろの席であったことに感謝しながら盛大に欠伸をした。
もちろん、あたしの欠伸は誰にもバレなかった。
「篠沢!!!お前はいつになったら英語の授業を聞くんだ!!」
英語の担当はまだ名前を覚えきれていない先生のうちのひとりに入る。
たしか、ハーフの先生だった気はするんだけど……。
アレクセイみたいな?
そんな感じの名前の先生は泰知の耳元で叫んだ。
「うるさいなぁ。気持ちよく寝てんのに。」
「お前はよく一番前でそんなに堂々と寝てられるなぁ。この問題、解いてみろ。」
あたしが座る二列目から二列廊下側の一番前の席が泰知の席だ。
入学早々、授業で寝るのはやばいと思って毎時間ヒヤヒヤしているあたしとは違って、泰知はおおらかにこの教室での毎日を送っているらしい。
「マックは父親に命令されて車を洗ったあとに買い物へ行った。」
黒板をしばし見つめていた泰知は、そう一口で言った。
「………正解だ。」
思い出した、アレックス先生だ。


