夕夏の瞳は炎が宿っているかのように強く鋭い光をまとっていて、俺は目が離せなかった。
心臓がドクドクと嫌に鼓動を繰り返す。
「俺は………。」
言葉に詰まった。
なんて言えばいいのだろうか。
俺は、泰知のことはもう吹っ切れたつもりでいた。
もちろん月命日には相変わらず拝みに行くし、忘れたことなんて一度もない。
だけど、俺は前を向けていると思っていた。
もう、前に進めていると思っていた。
違うのか?
「泣かないで、昇馬。」
夕夏の細長い指先が、俺の頬に触れた。
その親指が俺の頬を伝う湿っぽいものを拭う。
夕夏に触れられるまで、俺は自分が涙を流していることに気づかなかった。


