隣にいる夕夏が、何を考えているのか分からなかった。

ただ、すすり泣く声を聞いて、俺が泣かせてしまったのではないかと感じずにはいられなかった。

俺だって、本命の種目で全国大会を二度も逃したのだ。



「分かってたの。つい最近の昇馬が、いつもと違うこと。」


ああ、なるほどな。


こいつは俺の異変に気づいていたけど俺が本気なのをわかっていて、わざと何も言わなかったのか。


「本当は、泰知のことを誰よりも引きずっているのは、昇馬なんじゃないの?」


顔を上げた夕夏の頬には涙のあとがあった。


俺達は静かに見つめ合う。

心臓が、急に痛いくらいに鳴り出した。


───本当は、泰知のこと誰よりも引きずっているのは、昇馬なんじゃないの?


目の前で夕夏が言った言葉が頭の中で反芻される。