俺は上がった息を整えながら夕夏に近づく。
「夕夏。」
夕夏は椅子に足を乗せて体育座りをし、そこに顔をうずめていた。
「昇馬、ごめん。」
絞り出すような声で、夕夏はそう言う。
だけど、俺には夕夏の言いたい事がわからない。
夕夏が俺に謝るようなことなんて一つもないのだから。
「夕夏、どうしたんだよ。」
夕夏の隣に腰掛けた。
競技場の中ではすべての競技が終わり、これから開会式が行われる。
その準備に追われている役員の黄色いブレーカーがよく目立つ。
今年は山仲高校からの入賞者は俺と夕夏のみ。
総合でも8位以内に食い込めなかったから開会式は出なくてもいい。
ああ、俺の高校生活は終わったなとしみじみ感じてしまう。
まだ7月だ。
これから駅伝も本格化してくるだろうし、受験だって控えている。
高校生活はまだまだ残っているのに、俺の人生は終わってしまったような気がした。


