さっきまで高校生活最後をかけた戦いをしてきたというのに足はまだまだちゃんと動いてくれている。
どれだけ俺がレースに集中出来ていなかったかが読み取れる。
母さんを呼ばなくてよかった。
恥ずかしいから来ないで欲しいと結局3年間断り続けてしまったのは少し残念だけど、今日、ここにいなくて良かったと思う。
インハイに連れてってやるという約束は守れなかった。
それは後でちゃんと、謝るしかない。
俺は競技場の外を出て、血眼になって夕夏を探した。
どこにもいない。
どこを探してもいない。
これでトイレに入り込んでいたらとか、考えてしまった。
だけど、夕夏に限ってそんなことは無いだろうと思い直し、ただひたすらに走った。
どこにもいないと、第三ゲートに入っところで、俺は気づいた。
違う、あいつがいる場所は最初から俺がよくわかっているはずなのだ。
他に、いる場所なんてないんだ。
ピンときた場所が1箇所だけあった。
俺は急いで今来た道を引き返す。
まだ、そこにいてくれと心の底で願いながら。
正面入口の上、メインストリート前の客席までの階段を駆け上がる。
登りきると客席に出る。
そこから俺は右に曲がり、階段を二段、三段と昇る。
目を動かしながら階段を登っていると、やっぱり夕夏はいた。
客席の真ん中あたりの一番端。
毎年山仲高校が勝手に応援席としている場所だ。
いろんなレースをそこで見てきた場所。
一年前、泰知と夕夏が共に全国大会を決めた時も、お互いのレースをそこで見ていた。


