前川先生がいつから俺の状態に気づいていたかは分からない。

俺が俺自身の体と心がいつも通りじゃないことに気づいたのは、アップの途中だった。

俺は、二度目の失敗をした。


転んだわけじゃないし怪我をしたわけでもない。

途中棄権したわけでもない。


ただ、俺は失敗した。



800mの記録の方が100倍は良かったかもしれない。


俺は総合9位に沈んだ。

陣地に帰れば、みんなが始めかけていた片付けの手を止め、おつかれと声をかけてくれた。


夕夏は、陣地にはいなかった。

楓に聞いてみても、ふらっとどこかにでかけたまま帰ってこないということだった。

俺の走る前は確かにいたということであるから、俺が原因なのは確かだ。



とりあえずまだ残っているテントで早く着替えを済まし、外に出たところで前川先生はタイミングを見計らっていたかのように出てきた。