ここにきて、泰知がいないのが虚しいと感じるなんて思いもしなかった。


やっぱり、泰知はどこにもいないんだ。

あの屈託のない笑顔も、ここにはいない。


お前が生きていれば、お前が陸上部の部長だったはずだ。

そしたらもっと、団結力とかあって、陸上をチームプレーだと考えてもらえるようなチームが作れたかもしれない。

俺なんて、背中で示すことすら出来ないんだ。


お前がいれば、みんながお前の後ろについて行けば、って考えていたはずなんだ。

だけど、俺にはお前みたいなことの一つもできない。


そう、心の中で呟いてみても誰も返してくれないし返してくれるはずもない。


せめてひと言だけ、泰知に頑張れと言ってもらえたら、俺はたぶん、今日頑張れた。

今までで一番頑張れたはずだった。