たしかに、俺の種目はタイムレースで一発決勝。
組で1位になっても総合では入賞を逃すなんてことはしょっちゅうある。
下手すれば前川先生のお説教は避けられないかもしれない。
「不安大だな。じゃあ集中したいからいっかい帰ってくれない?」
「ストレッチくらいはしてやるから。走った来いよ。」
そう言って笑って見せた松田が、少しだけ泰知に似ているような気がして心臓がどきりと音を立てた。
すぐに違うと、その考えを消したが、まだ心のどこかが疼いているような気がする。
言われるままに、俺はまたサブトラックを走り出す。
今回の競技場が、たまたま一年前と同じ会場で良かったと思う。
春にも合宿で来ていたし、感覚を取り戻すのは早かった。
なあ、泰知。
俺が優勝でもしたら、お前はなんて言って祝福してくれるか?


