「泰知、出ねえの?」
隣に腰掛けながら率直な質問を投げかけてきた。
当然だ、と感じる。
あんなにも人間離れした走り方をしていたやつがはたりと登場しなくなったのだ。
そりゃあ、誰だって不思議に思うのは当然のことだ。
「出てこないよ、あいつは。もう二度と。」
そう言うと、野田は予想していた通りに首傾げた。
「いや、意味わかんないんだけど。」
泰知の死については、他のやつに言うつもりはなかった。
どうせそんなこと知らないうちに泰知の存在を忘れ、自分の人生を歩んでいくことになるだろうから。
「もう、あいつは戻ってこないよ。ただ、今は理由は話すタイミングじゃないだろ?お前、聞いたらきっとショックで試合になんか出てられないだろうな。だから、今は忘れろよ。
もし、どこかで会うことでもあったらそん時にでも教えるよ。」
それでも腑に落ちないというふうな表情をしていたが、俺がフードを被ると諦めたようにその場を去っていった。


