いちについて、




「なんだ?お前も慶名くるか?」



「俺に、そこまでの頭はないっすよ。」



そう言って頭を掻いた。

さすがに慶名は雲の上だ。



はあ、とひとつ大きく息を吐き出すと、それは少しだけ白くなってから消えていった。



「まあ、期待してろよ。テレビ。優勝してやっから、インカレ。」



「期待…してますね。」



「おう。じゃあ。」



片手を挙げて振り向き、背中だけが見える。


それは一歩踏み出すごとに小さくなっていく。



今度は、いつ会えるだろうか。



そう思いながらも、俺は自転車に跨った。


夜の風はまだ、寂しさが伴っている。