たまたま声がしたから教室の入口を見やると、ちょうど泰知と昇馬が仲良く教室に入ってくるところだった。
二人共イケメンなもんだから、通り過ぎる度に同級生や先輩関係なく、みんながキャーキャー騒ぐ。
「こいつらと幼なじみなんて、夕夏もまあまあ苦痛よね〜。」
「ん?なんか言ったか?」
会話の節にあたしの名前が出たからだろうか、泰知が振り返って楓に聞いた。
「いーや、何でも。」
そう言って楓はメロンパンにかじりついた。
楓は隣町から、学区外受験で山仲高校へ来たなかの一人だ。
もともと楓も陸上をしていたから、顔見知りではあった。
中学時代はライバルだったけど、高校で同じクラスになった今、あたし達はすでに親友と言ってもいいほどに打ち解けあっている。
「そのメロンパン、美味しそう。」
「あ、これ?」
楓は自分が持っていたメロンパンを指さした。
「家の向かいにさ、パン屋さんあんだよね。安いし美味しいし。今度買ってきてあげよか?」
「え、楽しみにしてる。」
「奢りじゃないからね?」
そう言って、楓は左手の平をあたしに見せた。
「後払い。」
「仕方ない。」
楓はすんなりと左手を引っ込めた。


