「三人して学校来ねえし、連絡が付けば泰知は死んだとか、意味わかんねえって。最初は、泰知も昇馬もいなくても、替え玉は十分いるし、出ようと思ったよ。………だけど、二人がいない駅伝を、俺は駅伝と言いたくなかった。諦めるしかないって、思っちまった。」
俺の頬を暖かい何かが伝う。
それが涙だと気づいたのは、凪斗さんがもう一度顔を上げ、俺に微笑んで見せたからかもしれない。
たった一筋の涙が、頬を伝ってぐっと膝の上で握りしめていた拳の上に落ちて弾ける。
それでも、凪斗さんは止まることなく話を続ける。
「泰知が死ななかったら駅伝に出れた。もしかしたら、昇馬が来ていたら行ったかもしれない。三人して休みやがって、どういうつもりなんだって、暫くは怒りが収まんなかったね。」
どこから溢れてくるのか、涙はまた一筋頬を伝い、暖かく濡らしていく。
「だけど、親友を亡くして、死人のような夕夏に寄り添ってるお前見てたら、あいつら含めてみんなのこと、責められなくなった。逆に、俺は何をしていたんだろうって思い始めて。俺気づいたんだよ。俺は、お前らに動かされていたって。お前ら、ほんとに強いよな。」


