「で、どっちが好きなの?」
「はあ?」
ふと物思いに耽っていた私は我に返り、思わず大きな声を出した。
教室に残っていたクラスメイト全員が私のことを一斉に見る。
まだ、出会ってまもないから名前の知らないクラスメイトなんてひとりや二人ってもんじゃない。
いくら地元の高校ったって、うちの高校はスポーツは盛んだし制服は可愛いし偏差値はまあまあだけど倍率だけは高いから、他所から来る人はすごく多い。
あたしは恥ずかしさを紛らわすようにお弁当の中に入っていた卵焼きを口に入れる。
そんなあたしの動作を見て、あたしの方を向いていた全員が思い思いの方向に視線を移した。
「楓、さすがに懲りない?」
「え、あんたこそ。」
あたしの恥を知らずにサラッと言い返す楓が悔しくて、唇をグッと結んだ。
「一組だけじゃなくて、他のクラスも噂してるよ?あんたらの関係。」
傍から見れば三角関係。
でも、あたし達にそんな感情なんて一切ないから……。


