凪斗さんの冗談も、今は少しだけ切なく感じてしまってダメだ。
今日の俺は、ダメだ。
せっかく夕夏が戻ってきたというのに。
凪斗さんが久々に来てくれたというのに。
「でも、お前らがちゃんと成長して泰知の思いを連れて都大路に行ければ、俺らはもうそれでいいんだ。行ってくれれば、もういいよ。」
絞り出すように呟き、まだ俺の頭の上にある手をぐりぐりと動かす。
その声色に、動作に、悔しさが滲み出ていた。
「すいません。」
もう、それ以上の言葉が出てこなかった。
「ああもう!お前は何度言ったら分かるんだ!」
いきなり大声を出した凪斗さんに、俺の肩はびくりとそれはまるでアニメの世界でしか有り得ないくらいに飛び上がった。
「今日、放課後ちょっと付き合え。絶対な?ほら、うんって頷いて練習行けよ。そろそろあの二人、取っ組み合いになるぞ。」
まあ確かに、凪斗さんが指さした方向では今すぐにでも殴り合いが始まりそうで、バチバチと火花が散っているように見えた。


