「あんまりお前は、俺を気にすんな。」
凪斗さんは突然俺の頭をむんずとつかむ。
勢いで二本くらいは髪が抜けたかもしれない。
だけど、俺のよりも少し大きな凪斗さんの右手はちょっとだけ俺の涙を誘う。
だけど、こんな所で泣いてるなんてしょうもないと思い直し、瞬きしてその存在を消す。
「夕夏が戻ってきたと言っても、お前が考えることはいろいろあんだよ。インハイにも行きたいんだろ?じゃあ、もう俺なんか過去の思い出は忘れて、前だけ見ろよ。」
「過去なんて、簡単に言わないでくださいよ。忘れろと言ったって、俺らのせいで凪斗さん達三年生の夢を壊したのは間違いなく俺らなんですから。」
真下で繰り広げられている二人の光景。
夕夏が帰ってきたことで陸上部は一気に息を吹き返したように明るくはなった。
でも、これを俺らのせいであっさり引退して行ってしまった先輩たちの目にはどのように映るのか考えるだけでも、辛い。
「まあ、いろんなショックで禿げそうにはなったけどな。」


