夕夏はわっと声を上げて泣き出した。
たぶん、俺の思いも、泰知の思いに乗せて伝えることが出来たと思う。
俺だって、ほかの何よりも夕夏が輝いている姿をずっとずっと見ていたい。
夕夏は俺らの太陽で、誇りで、存在意義なのかも知れない。
俺は、胸の中で涙を流す夕夏の背中を優しく擦り続けた。
夕夏は泣き止むまでずっと、ごめんね、泰知と何度も繰り返した。
ごめんね、ごめんねと。
俺も少しだけ、その言葉を聞いて泣きそうになった。
泰知のあの眩しい憎めない笑顔が頭の中に浮かび、少しだけ悲しくなった。
たぶんもう、夕夏は陸上に戻らないとは言わないと思う。
だって、夕夏の中に必死になって追いつこうとした泰知の姿は永遠となって夕夏の心の中に灯されているのだから。
大丈夫。
また、夕夏が戻ってきて、また新しい陸上部がここに出来る。
泰知がいなくてもきっと、もう大丈夫。
「おかえり、夕夏。」
聞こえたかどうかは分からないけれど、そう夕夏に囁いた。