「君たち三人は、きっといい幼馴染なんだね。」
顧問である松田先生は大きな黒縁メガネの奥から覗く優しそうな大きな目を三日月形にして言った。
「まあ、小一からクラス別だったこともないし、登下校の班も同じだったし。」
奇跡的に、中学校でも同じクラスになってしまったあたし達。
さすがに小学校六年間同じクラスだったから次はないだろうと思っていた矢先の事だった。
まあ、三人で飛び跳ねてよっしゃあ!って叫びあったことに間違いはないけれど。
『夕夏は、泰知と昇馬、どっちが好きなの?』
聞き飽きた問が頭の中で繰り返される。
誰の声かは、わからない。
だけど、たくさんの声が重なって
頭からつま先まで全身に広がる。
『どっちが好きなの?』
決められない。
三人の距離がちょうど良すぎるから。
二人の間に挟まれている自分の位置が心地いいから。


