俺は、そんな夕夏に全てを話す。
「あいつがそう願ったんだ。“俺が、どんなに陸上部から遠ざかろうとも、夕夏にだけは陸上部から離れないようにしてほしい。”って、あいつ俺にそう言ったんだ。」
「どういうこと………。」
「辞めるつもりだったんだ。もし、あの県駅伝で優勝して、全国大会決めたら。はっきりいつって言わなかったから、県駅伝の後か、都大路の後かっては言わなかったけど、県駅伝優勝したらって、言ったんだ。」
話しているうちに、夕夏の表情はみるみる変化していく。
最初は驚き、そして悲しみ。
また、驚きに戻る。
「なんで………。」
「わかんねえか?あいつが、陸上部としてすげえ成績背負ったまんま辞めようとした理由が。」
そう言うと、夕夏は少し考えてからひらめいたようにはっと顔を上げる。
「もしかして……怪我、してたの?」
「ああ。してたと言うより、しかけてた、だけど………。」
クォーターパンツをクシュっと右手で握る。


